ナイルワークスを退職しFaciloに入社。転職活動の振り返り
約 5 年半働いたナイルワークスを 2025 年 4 月 30 日で退職し、2025 年 5 月 1 日から Facilo に入社した。
転職活動を振り返る。
転職活動のきっかけ
当たり前だけどこれをよく聞かれたので、どこまで情報を出して話すか迷った。ナイルワークスの経営に関する劇的な変化があったため、くらいまでは書いても差し支えないだろうと思う。もう少し詳しい情報は数ヶ月以内には公開情報になると思う。
転職活動でやったこと
まず 1 つ前の転職の話だが、2019 年にサイバーエージェントをやめてナイルワークスに転職したときは、転職エージェントや転職サイトを使った。 転職時の軸として、自動運転や IoT を扱うようなディープテック・モビリティ業界に行きたいというほぼ明確な意向がありながら、そういった業界に全くつながりがなかったためだ。エージェントから候補としてもらった数社の面接に進み、条件面でマッチしつつ、一番働きたいと思ったナイルワークスに入った。
今回の転職は、まずは個人でやってみようと思った。
明確な転職軸を決めず、いったん幅広い視野で自分が求められる会社にどのようなものがどれくらいあるのか知りたい気持ちがあった。ここ数年のプライベートの変化もあり、自分が何をしたいかというより、自分の能力を知ってもらったうえで、求められる仕事につくのが良いと考えるようになった。これまでのキャリアで、自分がやりたいことをできたとしてもしっかりとビジネスとして成り立たせて売上や利益をあげていかないと仕事として長くやっていくことは難しいということを実感し、きちんとビジネスとしてやっていける仕事をしたいという気持ちもあった。
興味とかモチベーションを持てるかという観点でいえば、選択肢の中から一番強く惹かれたものを選べば良いと思ったし、仕事として選んだらそれを好きになることを含めて仕事だと思っているので、その点に関しては自分自身をコントロールできる気はしていた。
そういった理由でまずは連絡をもらった中から検討することにして、その中で選びきれなければあらためて直接応募やエージェントの利用を考えようと思っていた。
下記のブログ記事を書いて、主に X(Twitter)と YOUTRUST に流して連絡をいただく形にした。
転職活動 (2025 年 2 月 ~ 2025 年 4 月) Kirishiki Studios
具体的な連絡は約 80 件いただいた(単にイイねとか「気になる」がついたものは含まない)。これは自分の想像するよりはるかに多い数だった。自分の SNS になんか書いてもほぼリアクションなんてないし(けど見てるよって人はまあまあいる)、年齢は記事には書いてないけど調べればわかるがいま 45 歳なので、年齢を考えたら転職はかなり選択肢が狭まるという感覚を持っていた。
内訳としては、友人や過去の職場の同僚からの連絡でリファラルに相当するものが 15 件程度、それ以外は初めての方からの連絡だった。X で拡散されたのが大きかったのだろうと思う。
連絡手段は、一番多かったのが YOUTRUST のメッセージで 37 件。X の DM が 29 件、E メールが 10 件ぐらい、残りが Facebook・LinkedIn だった。
エージェントからの連絡が多いかなと思ったがそれは数件で、ほぼ全て、採用している企業からの直接の連絡だった。その中のさらなる内訳はきちんと集計はしてないが、エンジニア職の方から連絡をいただくことが多く、人事や採用担当からの連絡は少数だった。SNS を使ったことの特色がよく出ていたと思う。
連絡をいただいた皆さま、本当にありがとうございました。
カジュアル面談から、入社決定まで
全てに返信はしたが、十分に検討できなかった会社もあった。限られた時間の中ですべてを検討しつくすということは困難で、自分の知識の範囲でフィルタせざるを得ない。珍しいけどすごい面白い業界とか、すごい待遇のオファーとかがもしかしたらあったかもしれないが、そういうのを見落としている可能性はある。
35 社くらいとカジュアル面談ないしは何らかの会話をした。2 週間で 35 社と話したのでけっこう多くて、多い日は 1 日 7 件の面談を入れたこともあった。告知をして当日か翌日途中までに連絡をもらったものについては無条件で面談の予定を入れていった。しかし連絡の数が想像以上に多くて全部の予定を入れたらスケジュールが崩壊することがわかり、一次返信をしてあとから興味をもった会社だけ日程調整するというやり方に切り替えざるを得なかった。
実際に入社には至らなかったが、このように無条件にカジュアル面談した会社の中でとても良い出会いだなと思ったものがいくつかった。こういう職場があるのか、こういう思いで働いている人たちがいるのか、など、業界・カルチャー・制度・開発体制・技術選定・個人のキャリアなどさまざまな分野で話を聞くことができて、この 2 週間の検討期間は自分にとってはとても楽しく、実りがあるものだった。
その後、数社の選考に進み、事業ドメイン・一緒に働く人・働き方・人事制度や福利厚生などを検討して、Facilo に入社を決めた。
不動産業界に興味を持ったのは、まずナイルワークスでやっていたことの半分くらいは農地管理、つまり土地の区画のデータにまつわることだったので、領域として近いと思ったというのがある。Facilo のプロダクトのデモを見せてもらったときに、物件情報に加えて周辺のさまざまな情報を地図でレイヤー表示しているのをみたとき、やってること近いなと思って一気に親近感がわいたのを覚えている。
また、不動産取引はある程度大きくセンシティブな商取引・意思決定なので、人間の営業が介在する価値は引き続き求められ続けるだろうと思った。これには技術としてはすでに十分でも商慣行はすぐには置き換わらないだろうということも含む。
Facilo が良いと思ったことの大きな理由として、顧客の事業そのものを支援する SaaS であり、優れた SaaS を提供することが顧客のビジネスを伸ばすことに直結し、顧客の売上や利益も増えるのでその対価としてのサービスの価値が計測しやすく(継続して使ってもらう厳しさの裏返しでもあるとは思う)、それがさらには顧客からみた顧客である不動産取引をするユーザーにとっての便益も高まるというビジネスであることで厳しくも健全なビジネス構造だと思った。顧客の事業の中心的な業務の支援/拡大を担える SaaS というのは希少だと思った。また、Facilo のような複雑なビジネスドメイン & Web サービス & データ活用という組み合わせが、自分のスキルセットが活かせそうで向いてそうと感じた。
カジュアル面談の難しさ
以下、蛇足的なお気持ちの吐き出し。
今回、私は採用される側だったわけだけど、採用する側に回ったときにどういうやり方がいいのだろうかという課題意識を頭の片隅に持って、転職活動をしていた。その中で特に印象的だったのはカジュアル面談のやり方・あり方だ。
各社いろいろなカジュアル面談のやり方があって勉強になった。
特定の資料や動画を事前に見ておくことが前提のカジュアル面談は、こちらの負担は多少あるけど、おおむね中身の濃い時間になったと思う。 プロダクトや技術を推してくる会社はもちろん、カルチャーを推してくる会社もあれば、創業者の人柄や創業の経緯を推してくる会社もあった。
カジュアル面談の位置づけにも関わる話だけど、選考に進む意思があるかどうか不明な段階における情報交換の場、みたいな定義になると思うが、その線を守ろうとするのが伝わってきて突っ込んだ情報交換にならないみたいなことを経験した。候補者側が転職活動でどのフェーズにいるか、ほかをどのくらい検討しているかはある程度把握したうえで進め方を変える必要があると思った。私の場合は転職することは確定していて、近日中に次のステップに進むかどうか決める状態なので、次のステップに進むために必要な情報・コミュニケーションとは何かにフォーカスする必要があると感じた。逆に、すぐに転職するかどうか未定なのであれば、ブランディングみたいな視点で、長期の第一想起に残るような印象的な情報提供と、次のタイミングで連絡しやすいような終わり方が大事だと思う。
いずれにしても、どこかのポイントでインパクトのある印象を残せなければ、具体的に選考対象に入れてもらうことは難しい。私の場合はプロダクトのデモがあったことと、強烈に誘われたこと、この 2 つのどちらかまたは両方があった会社は印象に残った。この 2 つは会社ホームページの情報やスライドを見ただけでは得づらい体験なので、効果があると思う。
あとは、結局はマッチングなので、なんとなく気があいそうとか、一緒に働くイメージが湧くな、といったことはロジックでは説明しきれないので、選考に進む対象にならなかったとしても、その理由を深堀りしても仕方ないというのも一方では思った。選考に進まなかったとしてもその会社に魅力がなかったことは意味しない。むしろ他の人にはおすすめできるな、とか自分の性格やスキルセットが違ったら入りたいな、と思った会社もあった。
AI・LLM を仕事にすることも考えたけど…
ここ 2 年ぐらいの生成 AI・LLM のブレークスルーはすごく、知的好奇心もくすぐられるし、世の中の一部分を塗り替えるくらいのインパクトがあることは間違いないと思う。ずっと触っていたいと思うこともあるし、「LLM 無職」なんて言葉もできたが、生成 AI や LLM に没頭してそこから何らかの仕事につなげたいと思う気持ちも多少あった。けど、多少あるくらいでは駄目だなとも思った。
あくまで自分自身の仕事やキャリア観だけど、AI で解ける問題は今後も超速で発展しつづけるので、まずキャッチアップするのだけで大変だし、数ヶ月ごとにパラダイムチェンジするので、その時点ではニーズがあるだろうと思ったことがあっという間に低コストでできるようになってしまうため、いまある AI 技術を使ってソリューションを作ろうとするのはあまり筋がよくないと思っている。
もちろん資本力があってすぐにインフラをつくりにいける大企業や、基盤技術から作るスキルや気概のある人は別だが、私はシステムインテグレーションや運用を主戦場とするソフトウェアエンジニアだから、薄い知識で AI 自体を仕事にすることは得策ではないと思っている。
私が引き続き興味があって熱中している AI の活用分野は、ソフトウェアの開発・運用を改善・効率化する AI だ。Vibe Coding みたいにプロトタイプをすばやく作ることや、Cline/Cursor などの AI 支援によるコーディング、Devin のような AI エージェント、コーディングだけでなく要件定義やテスト・セキュリティ・課題抽出・不具合調査などソフトウェア開発・運用のほぼすべての分野に AI を活用できることは間違いない。特に 2025 年 2 月くらいの時期に、現場における実用化の壁を超えたという感覚がある。時間や工数を短縮できるのはもちろん、質を向上させたり、さらにはソフトウェア開発のワークフロー自体を置き換えることは確実だろうと思っている。